悪者になる
私が悪者になればいいんだ!
って意気込んで、立ち回ったことがあった。結果、私は本当に悪いやつになった。
そのときは、仲間割れするのが嫌で、あの人とあの人が喧嘩して、演奏会の企画が空中分解してしまうのが恐ろしかった。だから腹を括った。ここで啖呵切るのは私しかいないなって思った。仲良しもいないし、やりたい曲もやらせてくれないし、なんなら辞めてもいいかってずっと思ってたし、失うものがないな、って。
私はそういうつもりだった。窮鼠猫を噛む。追い詰められたネズミだったのだ。それで、自分が望んだとおり悪者になったんだけど、その場から離れたのは私ではなかった。
こないだ街でその人たちに出会って、お久しぶりです、って挨拶したのだけど、全然反応なくて、私は透明人間のようだった。1度目は気の所為だと思ったけど、2度目もそうだったから間違いない。とてもショックだった。まあ、仕方ないか。私はそれだけのことを言ったのかも。
でも、この出来事があって、ずっと私は自分が悪者になったと思い込んでたけど、私があの人たちを悪者にしたんじゃないか?って気づいた。
そうか。つまり。
私は本当に悪いやつだったのだ。街で会っても人とも思われないほどに、悪いやつ。
悪者になる、ということは、誰かを悪者にしてしまうことでもある。
私は腹を括って悪者になったけど、その反動で悪者になってしまった彼らが、私を人とも思わないのは当然だ。
考えが浅い自分にガッカリするけど、そうだ、私はこの私でしか生きていけない。情けない。でも、やり直しができないこともある。
何を記録するにも、まずはこのことを記録しておきたい。